ミラクル SUN デー

今回の話は2000年8月某日に今年の活動がおろそかになっている事を考えて
例年に比べて水量も少ないだろうと考え桂川にて行なわれたレポートである。


隊員プロフィール

隊長    MAD    / 実写版『ぼくのなつやすみ』を体験しているなぁと思うこの頃。

副隊長 ダッチ(DAT) / いつもながら、思い付きで川へのいざなうが、今回は活躍多し

正規隊員 のりたけ    / 前回(京都縦断編)から、ヘタレの称号を図らずも得てしまう。

           

               以上 ・・・ 正規軍三名(平均年齢22.0歳)

                        第六話

 連日、35度を越える猛暑にみまわれる千年紀の京都。

 暑さは既に近畿の水瓶を枯らさんとする勢いであった。

 相変わらずのメンバーは、MAD家に集まり数十分後の行軍へ身体を冷ましていた。

 のりたけは、扇風機を独占。

 ダッチは数年前からMAD家に住み着いている蝙蝠と戯れている。

 ダッチ「うぉ、こうもりめっちゃ近い! 3匹、いや4匹!」

 MAD宅、部屋の外壁と内壁の間に住み着いている蝙蝠達に熱視線を送り続けるダッチ

 そんなダッチを尻目に、MADは今になって装備の修繕をしていなかった事を悔いていた。

 「カラン」飲みほした麦茶のグラス中の氷が鳴る。

 MAD「さあ、そろそろいくか!」

 のりたけは、まだ冷房の効いたこの部屋に居たいらしく恨めしそうに上目遣いにこちらを見る。

 ダッチも蝙蝠から目を離し、いざ出動となった。

 時刻は、3時を過ぎた暑い盛りであった。

 これが長い戦いの始まりであった。

 例年になく雨量の少ない近畿はある意味探検隊にとっては好都合といえた。

 水不足の影響は桂川も例外ではないからである。

 案の定、いつもならかなりのデンジャー度を記録するポイントも軽くクリアできるようだった。

 更に嬉しい事に、水量が少ない分魚がかなり捕れやすくなっていた。

 早速、いつもなら「魚なぞとれるか!」という滝周辺でも見るからに魚が大量にいる。

 ダッチ「いっちょ漁っとく?」

 ダッチは言うそばから、腰をかがめてたも網を入れる。

 ダッチ「うおぃ、ナマズゥ!!」

 なんと、ダッチはミラクルにもタモ網で10cmクラスの型の良い鯰をゲットしていた。

 ダッチ「10年に一度の逸材」

 「使い方間違ってる」と内心思いながらも狂乱するダッチにツッコミを入れられなかったMAD。

 その後負けじとMADも網を入れる。

 MAD「うらぁ、4Hit!」

 タモ網の中には、オイカワ&ゴリが4匹も入っていた。

 開始10分

 バケツの中には、正規隊員の誰もが予想しなかった“大漁”という二文字が踊っていた。

 ナマズ以降バケツを眺めっぱなしのダッチの口元は緩みっぱなしであった。

 MADにのりたけも例外ではなかっただろう。

 しかし、ここまで来てさっさと引き上げてしまうのはどうか?

 一同は即席の捕獲プールを作成。その中に金ザルという2重のガードをしいて、

 万全の体制を残し、ジャングルと化す中洲へと行軍していった。

 

 中洲まではいとも簡単であった。

 前年の行軍中止という苦汁を舐めた時に比べると雲泥の差であった。

 しかし、その代わりと言っては何だが、中洲はもはや人間が入れるとは思える状態ではなかった。

 そういわば、ジャングル。

 MAD「ジャングルやなぁ……アマゾンの密林ってこんなんやろか?」

 ダッチ「アマゾンやったら、もっとデンジャーな生物がいっぱいおる。ワニガメとか。」

 MAD「確かに」

 のりたけ「草とかで切れんのいややから、かえろ〜」(草で肌が斬れる)

 早速のヘタレ発言が飛び出す。

 我々は、まず、陸地から行けるところまで行こうという事で合意。

 今回は水が少ない事もあり、我々以外にもこの秘境へ挑戦しているらしく

 途中までは割合道らしき物があり、行軍は意外と楽であった。

 しかし、道が途切れると圧倒的な背丈のプラントに圧倒されつつ進むという

 いわば、ジャングル行軍になっていた。

 MAD「さすがにきっついなぁ」

 隊長の口から弱音が出ると士気に関わるのだが、

 さすがに場慣れしたダッチにのりたけはその程度では動じなかった。

 ダッチ「こっちいけんのとちゃう?」

 MADが半ばあきらめていた水中ルートを更に進むダッチ。

 水中ルートは、急な落ち込みを警戒してMADはあまり考えていなかったが

 ダッチの挑戦的な行動が行軍のスピードを早めた。

 しばらくして、水中ルートにも限界がきて、陸地へあがる一同。

 再び陸地へ揚がるとそこは、茨トラップが待っていた!

 MAD「いたたたた……」

 まんまと茨トラップにかかるMAD。

 ダッチ「ったい、ったい」

 更にカウンターで茨にかかるダッチ。

 のりたけの顔にはあまり精気は感じられない。

 ダッチ「うを!をい!くもぉー!」

 狂声を発するダッチ。

 行軍ルート、視線のむこうには鬼蜘蛛と呼ばれるかなり大きめの蜘蛛がいた。

 ダッチ「おまえ蜘蛛とかシャレなってへんて!」

 昆虫ギライのダッチには、驚異だったに違いない。

 蜘蛛はMADがタモですくってどこかへ放り投げることで事なきを得る。

 のりたけ「さっき毒蜘蛛おったで」

 ここに来て嘘言病の気が出る。

 ダッチ「セアカゴケグモか?」

 冗談交じりに尋ねる。

 のりたけ「この頃は、タランチュラとかアリゲーターとか放しよるしなぁ」

 話をはぐらかす。

 茨地獄を抜けるとそこは巨木の根元にあたり、草はなく開けていた。

 ダッチは勇んで水中ルートを探しに駈けていった。

 ずぶぉぉお!

 ダッチ「うをー!またかぃ〜!」

 悲鳴のする方向を見ると、ダッチの足は土中に埋まりいわば沼にはまっていた。

 過去の行軍でも湿地帯の沼にはまり、草履一足を紛失しているダッチ。

 周りの隊員に救出を求める。

 MADは内心苦笑しつつ、助けるすべも無い事から自力脱出を促した。

 水中行軍が無理な事が分かると再び道なき道を歩き出した。

 次に道が開けるとそこにはにわかに信じがたい光景が広がっていた。

 MAD「テントや」

 意外な事に、人間が生活をしていた。

 MAD「ここまで行軍して来る事事態が困難なのにこんな所にテントを立てるとは……」

 舌を巻く一同。

 テントを抜けるて、更に同じような草木生い茂る密林が続く。

 さらに、15分ほど進んだであろうか、かつての砂浜。 

 つまり、中洲の終点。そこには砂浜はなく背丈の低い草が茂っていた。

 ダッチ「なんか、達成感に欠けるなぁ」

 MADはそれなりに満足していた。

 体は傷だらけ、帰り道を考えると気も引ける。

 しかし、晴れやかであった。

 ダッチ「泳いで対岸まで帰れたら良いのに。あの鴨が助けてくれへんかな。かもぉー!」

 視線の先には鴨が。

 しばらくして鴨もどこかへ去って行ってしまった。

 恨めしそうに対岸を眺める。

 のりたけも同じ気持ちらしく

 のりたけ「対岸ルート捜して来るわ」

 と探しに行くも、あっさり無理。

 のりたけ「雨降ってきそうやし、はよう帰ろう。」

 天候もあまりよくないので来た道を戻る。

 さすがに帰り道は早い。

 のりたけも得意のマッパー技巧をいかんなく発揮し

 小雨の降る中を帰り事を急いだ。

 のりたけ「あぶない、戻れ!」

 何事かと先頭を行くMADはのりたけを見る。

 「蜂の巣!」

 MADが頭上見ると明らかにやばめの蜂の巣がぶら下がっていた。

 くわばらくわばら……

 途中、大活躍のダッチによる新ルートの開発により時間はかなり短縮。

 さあ、帰ろうかとナマズの保管プールへ進む一同の前に不吉な大粒の雨。

 不安は適中

 MAD「なまず・・・・おらん」

 ダッチ「うそぉん!おらんはずないやろー!」

 鯰はおろか、オイカワ、ゴリも逃げ送れた1匹を残し全て脱走していた。

 逃げられてたまるかと、狂乱したダッチはあたりを探し回る。

 しかし、2重に張り巡らされた檻は見事突破され、影も形もなかった、

 あきらめきれないダッチはその後10分ほど探し回った。

 が、一向に見つかる気配は無し。

 ダッチ「10年に一度あるかないかのラッキーショットやってんぞあれ・・・」

 落胆したダッチを連れ一行はその場を離れた。

 

 一同はダッチを満足させるためにも次の漁場へと向かった。

 そこは、いつもなら地膚の見えるやりやすい漁場だったのだが

 今年は草木に覆われ漁をするのも容易ではなかった。

 しかし、MADはここぞとばかりに金ザルを一撃。

 オタマジャクシ一匹

 「いらん」

 もう一撃

 後ろ足の生え揃ったカエルになりかけのオタマジャクシ一匹

 自らジャンプしてザルから脱出する。

 更に一撃

 ん?重い。

 バシャバシャァアーーー!

 「をぃ!」

 一同びびる。

 しかし不覚にも取り逃す。

 あの鱗、サイズ……

 ここに来てまたもミラクル。

 なんと、金ザルでなんとブラックバスをさらってしまっていたのである。

 しかし、残念な事に取り逃がす。

 MAD「ブラックバスや……」

 ダッチ「なんで、あげへんかってん!」

 一同悔しがる。

 ダッチ「ひきあげたら伝説やったな……」

 のりたけ「まるっきりネタやん」

 MAD「確かに3段落ちやな(笑)」

 逃がした魚は大きいというが15cm以上の大物であった事には違いない。

 しかし、このブラックバス以降なにもとれない。

 のりたけはもとより、ダッチまでモスキートアーミーの急襲により

 待避し、MAD一人で泥の中を一掬いする。

 泥を洗うとなんと、ザリガニがゴロゴロと10匹ほど+オタマジャクシ

 少々笑える釣果にも、既にテンションの落ちたダッチらは乗ってこなかった。

 こうして、今年の桂川はミラクルと共にすぎていった。

 行軍時間  3:30

 制作

 本文 MAD

 追加・修正 DAT