(波打ち際で立っているクロードの所へレナがやってくる)
レナ「ごめんなさい。急に呼び出しちゃったりして。」
クロード「いや、いいよ。でも、どうしたんだい? …眠れないの?」
レナ「ううん、違うの。となり…いい?」
クロード「あ、うん。」
(レナそばへ行く)
レナ「あのね、クロード・・・。」
クロード「ん?」
レナ「私、最後にクロードにお礼を言っておこうかと思って。」
クロード「お礼…?」
レナ「ありがとね。クロードのおかげで私、今まで頑張ってこれた。」
クロード「レナ・・・。」
レナ「本当に感謝してる。アレンの時も… お母さんの時も…。私がくじけそうになった時、いつもあなたが支えてくれた。」
クロード「ううん…それは違うよ。みんな、レナ自身ががんばったからうまく行ったんだ。」
レナ「そんな・・・。」
クロード「僕は… ちょっと手助けしただけだよ。後はみんな、レナ自身の力さ。」
クロード「それに…僕の方こそレナに随分勇気をもらったよ。
クロード「右も左もわからない場所で、不安になった時、いつもレナの存在だけが心の支えだった・・・。」
レナ「クロード…私・・・。」
クロード「レナ…。僕ね、この戦いが終わって、エクスペルに帰ったら君に聞いて欲しいことがあるんだ。」
レナ「聞いてほしいこと?」
クロード「うん。とても大事な事なんだ…。聞いてくれるかい?」
レナ「クロード…うん。」
クロード「レナ・・・。」
レナ「ん?」
クロード「必ず… 生きてエクスペルに帰ろう。」
レナ「うん…約束ね。」
クロード「ああ。約束だ。」
(二人が近づいて……)
(波打ち際で立っているセリーヌの所へレナがやってくる)
レナ「何してるんですか、セリーヌさん?」
セリーヌ「ちょっと、いろいろと考えごとをしていましたの。今までのこととか、明日のこととかをね・・・。」
レナ「思えば、本当に色々なことがありましたね。」
セリーヌ「本当ですわね。さまざまな出会いと、別れがありましたわ。」
レナ「でも…そんな旅も、もう終わりなんですね。」
レナ「ねえ、セリーヌさん。」
セリーヌ「何ですの?」
レナ「私たち…勝てますよね。」
セリーヌ「モチロンですわよ。わたくし達が出会った、たくさんの人達の思いを、無駄にするワケにはまいりませんからね。」
(波打ち際で立っているレナの所へアシュトンがやってくる)
アシュトン「やあ、レナ。」
レナ「わざわざ呼び出したりして、本当にごめんなさい。」
アシュトン「いや、別に構わないよ。ところで…大切な話って、いったい何だい?」
レナ「今、こんな事を言うべきじゃないって、分かっているの。
レナ「でも、明日が最後の戦いだと思ったら、どうしても言わずにはいられなかった。」
レナ「聞いて。私はアシュトンの事が…あなたの事が・・・。」
アシュトン「待って、レナ!」
アシュトン「ぼくだって、一応男なんだ。その続きは、ぼくに言わせてくれないか?」
レナ「えっ・・・。」
アシュトン「ぼくはレナのことが好きだ。他の誰にも、負けないくらいね。」
アシュトン「レナ。君の答えを聞かせてくれないか?」
レナ「私もアシュトンのことが好き。あなたと同じくらい・・・ううん、あなたに負けないくらい好きよ。」
アシュトン「愛しているよ。レナ・・・。」
レナ「私も・・・。」
(波打ち際で立っているオペラの所へレナがやってくる)
オペラ「あら、レナじゃないの。」
レナ「いよいよ、明日ですね。」
オペラ「そうね。この前の落とし前は、キチンとつけてこないとね。」
レナ「長かった旅も、ようやく終わりですね。でも…明日の戦いが終わったら、オペラさんは帰っちゃうんですよね。」
オペラ「まあ、そうなるわね。そろそろ家に帰らないと、さすがにマズイから。」
レナ「さみしくなりますね。もう少し、一緒に旅を続けていたかったな・・・。」
オペラ「私だって、あなた達と別れるのは辛いわよ。」
レナ「また…いつか、会えますよね。」
オペラ「そうね。いつか、きっとね・・・。」
(波打ち際で立っているエルネストの所へレナがやってくる)
(波打ち際で立っているプリシスの所へレナがやってくる)
プリシス「どったの、レナ? なんか、ドヨドヨしてるよ?」
レナ「相変わらずね、プリシスは。あなたは恐くないの? 明日の戦いには、宇宙の運命がかかっているのよ。」
プリシス「んなこと言ってもしょ〜がないじゃん。誰かに代わって貰えるわけじゃないんだしさ。」
レナ「それはそうだけど・・・。」
プリシス「だったら、あたし達でやれるだけの事はやっておこうよ。それでも負けちゃったら、そん時はそん時だよ。
プリシス「大丈夫。宇宙が壊れちゃったら、誰も文句なんか言えないんだからさ。」
レナ「そうね。悩んでたってしょうがないわよね。明日は、やれるだけのことを精一杯やりましょうか。」
プリシス「そうそう。あんま悩みすぎると、シワになっちゃうよ。」
レナ「えっ!? ちょ…プリシスっ!」
(にげるプリシス)
プリシス「ひゃ〜っ。レナが怒った〜っ。」
レナ「まったく…プリシスだって、恐いでしょうに。無理しちゃって。」
(波打ち際で立っているボーマンの所へレナがやってくる)
レナ「どうしたんですか、ボーマンさん?」
ボーマン「明日のことを考えていたら、どうも落ち着かなくてな。」
レナ「無理もありませんよ。私たちに、全宇宙の運命がかかっているっていうんですから。」
ボーマン「なあ、レナ。俺たちで奴等に勝てると思うか?」
レナ「正直なところ、分かりません。十賢者達は本当に強いですから。」
ボーマン「はは…俺としたことが、弱気なことを言っちまったな。今度こそ、絶対に勝たなきゃならないっていうのに。」
レナ「みんなで力を合わせて頑張りましょうよ。全宇宙のみんなのために… そしてニーネさんのためにも。」
ボーマン「そうだな。俺たちに残された道は、勝つしかないんだからな。」
(波打ち際で立っているディアスの所へレナがやってくる)
ディアス「父さん…母さん…セシル… 今度こそ、そっちに行けそうだ・・・。」
ディアス「レナか・・・。」
ディアス「見てたのか?」
レナ「う、うん。悪いとは思ったんだけど・・・。」
レナ「ねえ、ディアス。あなたの家族の事は、不幸な事故だったのよ。だから、そんなに自分を責めないで。」
ディアス「違うな…俺の家族が山賊に殺されたのは、俺達が弱かったからだ。
ディアス「力があれば、踏みにじられる事もなかった・・・。」
レナ「ディアス!」
ディアス「しょせん世の中は力が全てだ。だからこそ、俺は戦い続けてきた。
ディアス「何者にも負けない、力を手に入れるためにな。」
レナ「嘘っ!あなたは、ただ逃げているだけよ。
レナ「戦いの中に身を置くことで、人間らしい心を殺すことで…、必死に過去を忘れようとしているだけ・・・。」
ディアス「この俺が、逃げている…だと?」
レナ「そうよ!あなたは現実を認めるだけの勇気がない、ただの臆病者にすぎないわ。
レナ「それじゃあダメなのよ。逃げ回るだけじゃ・・・ 立ち向かおうとしない限り、必ず過去に追いつかれてしまうわ。
レナ「だから…どんなに辛くても、現実から目を反らさないで!逃げ出さないでよ!」
(帰ろうとするディアス)
レナ「ディアス!」
ディアス「海はいいな。時に優しく、時には荒々しく…あらゆる物を包み込むだけの広さを持っている。」
ディアス「レナ…お前によく似ている・・・。」
レナ「ディアス・・・。」
(波打ち際で立っているノエルの所へレナがやってくる)
レナ「ノエルさん。」
ノエル「やあ、レナさん。」
レナ「何をしていたんですか? こんなところで。」
ノエル「ちょっと海を見ていたんですよ。もう見納めになっていまいそうですからね。」
レナ「えっ・・・。」
ノエル「前に戦った三人からも分かるように、十賢者は本当に強いです。
ノエル「一番弱い者達でさえも、あれだけの力を持っているのですから。」
ノエル「だけど、安心して下さい。みんなの事は、僕が命にかえても守ります。」
レナ「ノエルさん・・・。」
ノエル「どんな事があっても、レナさんには生きていて貰いたいんです。
ノエル「たとえそれで、この僕が命を落とすようなことになっても・・・。」
レナ「そんな事、言わないで下さい。私を残して死ぬだなんて… たとえ冗談でも口にしないで・・・。」
ノエル「えっと… レナ…さん?」
レナ「そんなの、イヤです。私の…残される方の気持ちも考えて下さい。」
ノエル「すみません。少し考えが足りませんでしたね。明日は、みんなで生き残れるように頑張りましょうか・・・。」
レナ「絶対に死んだりしないで下さいね。」
ノエル「ええ、約束します。ですから、何があっても、レナさんも生き延びて下さい。」
(波打ち際で立っているチサトの所へレナがやってくる)
チサト「ねえ、レナあなたは何で戦っているの? やっぱり、エクスペルの人達のため?」
レナ「どういう事ですか?」
チサト「明日の戦いには全宇宙の運命がかかっているのよ。たとえ逃げ出したって、誰も文句は言わないわ。」
レナ「そうですね。確かに、恐くないって言ったらウソになります。」
チサト「だったら何で戦えるの? そんな小さい体に、大きなものを背負わされてまで・・・。」
レナ「しいて言うなら、みんなのため…かな?」
チサト「みんなのため?」
レナ「ええ。エクスペルの… そしてネーデの人達の顔に、笑顔を取り戻してあげたいんです。
レナ「今まで助けてくれた人達への、お礼の意味も込めて。」
チサト「そっか…ゴメンね・・・。」
レナ「なんで謝るんです?」
チサト「私たちネーデ人のせいで、あなたに辛いことばかりさせてしまって。」
レナ「何を言っているんですか。それが私たちにしか出来ない事なら、喜んでやりますよ。」
チサト「レナ・・・。」
レナ「どうしたんですか? 今日のチサトさん、どこかヘンですよ。」
チサト「そうかな?」
レナ「そうですよ。いつもの明るさは、どこに行っちゃったんですか。」
チサト「そういえばそうね。少し…おかしいかもしれないわね。」
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